【読書備忘録】岡本亮輔『聖地巡礼』(2015)
「聖地」とは何ぞや。
試しに広辞苑で引いてみると、「神聖な土地。神・仏・聖人などに関係ある土地」とあります。流石に要領を得た説明です。
しかし近年では、アニメ作品の舞台となった場所を「聖地」と表現することも多くなっており、指し示す対象が必ずしも宗教的なものとは限らなくなっているようです。
本書はサンティアゴ大聖堂から、青森にあるキリストの墓、そしてアニメの舞台まで様々な「聖地」を取り上げ、そこへ「巡礼」するという行為が現代においてどのように意味づけられているのかを考察した一冊です。
〈内容紹介〉※Amazon商品紹介欄より
非日常的な空間である聖地―。観光地として名高い聖地には、信仰心とは無縁の人々が数多く足を運んでいる。さらに近年では、宗教と直接関係のない場も聖地と呼ばれ、関心を集めている。人は何を求めて、そこへ向かうのか? それは、どのような意味を持つのか? サンティアゴ巡礼や四国遍路、B級観光地、パワースポット、アニメの舞台など、多様な事例から21世紀の新たな宗教観や信仰のあり方が見えてくる。
【読書備忘録】川村邦光『出口なお・王仁三郎』(2017)
出口なお・王仁三郎:世界を水晶の世に致すぞよ (ミネルヴァ日本評伝選)
- 作者: 川村邦光
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 2017/09/10
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
スピリチュアル界隈では常識の如く広まっている「手かざし」という民間療法がありますが、その日本での発祥は、明治期に成立した神道系新宗教「大本」が用いた宗教的治療法が源流だと言われています。
宗教法人「大本」(正式名称に「教」は入らないのですが、普通名詞との区別がややこしくなるので、当記事では以下「大本教」と表記します)は、元々は京都府丹波地方の貧農であった出口なおの神憑りによって興った宗教です。当初はあくまで地方の一集団でしかなかったなおの教団は、出口王仁三郎という「聖師」の存在により一つの宗教として体系化され、大正期~戦時中にかけて拡大していくことになりました。
大本教自体が戦後に大きな勢力となることはありませんでしたが、その元信者たちが興した新たな宗教(世界救世教、生長の家など)が更に分派を繰り返していくことで、大本教の影響を直接・間接的に受けた新宗教が次々と生まれていくことになりました。
本書は様々な神道系新宗教の文字通り「大本」となった大本教の二大教祖、出口なおと王仁三郎の生涯を追った評伝です。
〈内容紹介〉※ミネルヴァ書房公式HPより引用
出口なお(1837~1918)・王仁三郎(1871~1948)「大本」の教祖。
激動の近代日本に直面する中で「大本」を創唱し発展させた、開祖なおと聖師王仁三郎。本書では、二人が開祖・聖師となる過程を近代日本と民俗社会の相剋の中から辿るとともに、その思想の創造性を考察する。
【日記】今年も下鴨納涼古本まつりへ
東京がコミケなら京都は古本だ。
てなわけで今年も下鴨納涼古本まつりに繰り出してきました。
去年は通り雨の後に行ったので、「納涼」と言いながら釜茹地獄の如き様相でしたが、今回はカラッとした晴天につき、糺の森が作る日陰がなかなか心地よい涼しさでございました。
そして今回の戦利品は、以下の如く。
- 安部公房『内なる辺境』(中公文庫)
- 井上順孝『新宗教の解読』(ちくま学芸文庫)
- 井上頼寿『京都民俗志』(東洋文庫)
- 氏家幹人『江戸人の老い』(PHP新書)
- 氏家幹人『江戸の性風俗』(講談社現代新書)
- 岡田明子/小林登志子『シュメル神話の世界』(中公新書)
- 沖浦和光『「悪所」の民俗誌』(文春新書)
- 木原善彦『UFOとポストモダン』(平凡社新書)
- 末木文美士『日本仏教史―思想史としてのアプローチ』(新潮文庫)
- 平泉澄『物語日本史(上・中・下)』(講談社学術文庫)
- 宮田登『日本の民俗学』(講談社学術文庫)
- 吉田伸之『都市―江戸に生きる』〈シリーズ日本近世史④〉(岩波新書)
- 脇本平也『宗教学入門』(講談社学術文庫)
- 『幽霊の本』〈Books Esoterica 25〉(学研)
こんなに買ったところで全部読めるわけないでしょ? アホなの?
と、毎回自問自答するのですが、結局アホなので買ってしまいました。こうして順調に積読は増えていくのである。
いやね。毎度毎度、思ってはいるのですよ。「流石にもう欲しくなる本はないだろう」と。
しかしいざ無数に並ぶ本棚を見て回ると、あるわあるわ面白そうな本が無尽蔵に。
大部の本は古本でも高価なことが多いので、なるべく文庫や新書に限って買うようにしているのですが、それでも10冊以上お買い上げとは一体どういう了見か。やはり面白そうな本に満ち溢れているこの世界がおかしいのだ。
そう自分に言い訳しながら、出掛ける時よりはるかに重くなったリュックを背負って、容赦のない日差しに焼かれながら家路につくのでした。しかしどこに置こうか、この本…
【読書備忘録】ASIOS『昭和・平成オカルト研究読本』(2019)
すごい本が出ました。
近代以降、非科学的な言説は「迷信」として退けられる一方で、社会に対して常に一定の影響を及ぼしてきた「オカルト」という存在。
オカルトは戦後の70~80年代にかけて爆発的な流行を見せ、それが落ち着いたかのように見える現在でも、「スピリチュアル」や「ニセ科学」などの形で厳然たる存在感を放ち続けています。
本書は昭和期から現在に至るまでのオカルト主要トピックを取り上げ、それらに客観的な検証を加えた400頁超の大著です。
〈内容紹介〉※版元ドットコムより引用
数年ごとに起きるオカルトブーム。超能力や心霊、占い、予言、奇跡、UFO、UMA、さらには超古代文明など常識では説明のつかない出来事は人々を惹きつけてやまない。しかしながらブームが終われば、多くの出来事は次第に忘れ去られてゆく。本書はそういった過去のオカルトを懐かしむのではなく、徹底的に資料を集め、確実に裏付けを取ったもので構成されている。
30年あまり続いた平成という時代が終わりを迎え、元号が「令和」へと変わった今、昭和と平成、約100年の間に起こったオカルトを深く考察していく。
【読書備忘録】『怪異学入門』(2012)
小松和彦氏による民俗学・人類学ベースの「妖怪学」に対し、歴史学ベースでの「不思議な物事」の研究を目指す、東アジア恠異学会。変換しにくい
本書は当会の提唱する「怪異学」のエッセンスを纏めた入門書となります。
〈内容紹介〉※岩田書院公式HPより引用
東アジア恠異学会創立10周年を記念し、『怪異学の技法』『亀卜』『怪異学の可能性』に続き、これまでの研究成果を「入門書」として刊行。
第1章では、王権と怪異、怪異の流出、知識人の系譜、を柱に、怪異学の視点を語る。
第2章では、不思議なコトやモノを分析する方法を具体的に提示した論考5編を収録。
第3章では、学会創設者へのインタビューを通じて、新しい学問が誕生する軌跡を辿る。