河原に落ちていた日記帳

趣味や日々の暮らしについて、淡々と綴っていくだけのブログです。

【オカルト本を読む】五島勉『ノストラダムスの大予言』

ノストラダムスの大予言 迫りくる1999年7の月人類滅亡の日 (ノン・ブック)

 今年7月21日、五島勉氏の訃報が報じられた。

 2020年6月16日、90歳で逝去されたという。ご冥福をお祈り申し上げます。

 

 さて五島勉氏といえば、オカルトを嗜む人間番外地の方ならわざわざ説明するまでもない有名人だろう。1973年に『ノストラダムスの大予言』という書籍を出版し、たちまちミリオンセラーを叩き出した世紀の大ベストセラー作家だ。

 著者自身想定外であったろう爆発的ヒットによりシリーズ化がなされ、初刊から98年までに計10冊の『大予言』シリーズが刊行された。シリーズ全体の売り上げは最終的に590万部を超えたという。ちなみに初巻については2014年に電子書籍化されており、現在でも読むことは容易である。

 その内容をかいつまんで言えば、「ノストラダムスというフランスの予言者が、1999年に人類が滅亡することを予言していた!」という主張を、当時の社会情勢を交えながら本一冊丸々使って説明したものである。以降のシリーズでも手を変え品を変え、「1999年滅亡説」が繰り返し主張されている。

 この「予言」が当たらなかったことは言うまでもない。今ではノストラダムスという名前すら知らない人も増えた一方、オカルトファンの間では有名なネタとして今も生き永らえている。オカルトに特に関心がない人でも、「1999年7の月、空から恐怖の大王が降ってくる……」というフレーズだけは何となく知っている人も多いだろう。

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今でもいらすとやでフリー素材化される程度には知名度がある

 しかしネタの知名度はともかくとして、五島氏の書いた『ノストラダムスの大予言』という著書自体を、出版から2つの年号を経たこの時代に読んでみた人はそんなにいないのではないだろうか。

 今となっては正直、本書を読み直す意味は特にない。滅亡説が外れたこともそうだが、本書で披露されたノストラダムスの人物像や予言詩の解釈も、大幅な誇張や(恐らく意図的な)誤り、明らかな創作部分が多く、ノストラダムスの研究書としても役に立たない。

 しかし70年代に本書が広い支持を得て、それから世紀末にかけても何らかの形で、一部の人々の世界観に影響を与え続けていたのは事実である。五島氏の「予言」が当たらなかったと言って今笑うのは簡単だが、どうしてそんな「予言」がかつて広く受け入れられ、それがどんな爪痕を残したのか、考えてみるのも無駄なことではなかろう。

(蛇足だがあらかじめ断っておくと、五島氏の訃報にかこつけてこの記事を書いた訳ではない。元々この記事を書こうと調べごとを進めていた最中に偶然訃報が重なり、結果的に訃報に合わせたような形になってしまったことを付記しておきたい)

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【読書備忘録】稲生平太郎『何かが空を飛んでいる』(1992)

定本 何かが空を飛んでいる

定本 何かが空を飛んでいる

 

 2020年6月17日、宮城県上空に謎の白い物体が飛行しているのが話題となり、既にWikipediaの記事にもなっていて驚きました。素性の分からない物体が、世間の目をあざ笑うかのように飛んでいる……まさに未確認飛行物体、いわゆるUFOというやつです。

 とは言え、形状からすると明らかに何がしかの観測用気球と思われるため、流石に「宇宙人(エイリアン・クラフト)だ!」という声は少なかったのがちょっぴり寂しい思いもします。

 どこの誰が何の目的で飛ばしたものなのか、具体的な素性が未確認という意味では未だUFOではあるのかもしれませんが、もはやオカルト案件と言うより国防上の問題となっているのでこれ以上のオカルト的掘り下げは無理がありそうです。今のところ続報はありませんが、海外の観測用気球が風に流されて辿り着いた可能性が指摘されており、恐らく事の真相としてはそんなもんなのでしょう。

 現在、UFO関連の話題は散発的に出てきては一瞬で消費され消えていくような印象です。しかしかつてはかなりの人々がUFOに夢中になり、空を見上げ遥かな宇宙に想いを馳せた時代もあったはず。日本語としては変ですが、「UFOは実在するのか」どうか、今でも気になっている人は少なくありません。

 個々のUFO事例の真偽は誰しも気になるところ。しかしここで視点を変えて、人間にとって「UFOを見ることの意味」とは一体何なのか、考えてみるのはどうでしょう。

 人々は、いったいなぜUFOを見て、どうして宇宙人に遭遇するのか?

 UFO現象自体を人間の営みの一つと捉え、文化的な側面から眺めることで、UFOのまた違った一面が見えてくるのではないか。今回紹介する本は、そうした視点からUFO現象の一つひとつに考察を加えた、オカルト研究史上の名著です。

〈内容紹介〉Amazon商品紹介欄より引用
 UFO現象や神秘体験を明快に論じた奇跡的名著がついに復刊! あわせて西洋近代オカルティズム略史、ジョン・ディーの精霊召喚、ナチズムとオカルト、柳田國男南方熊楠の山人論争など、他界に魅せられし人々の、影の水脈をたどるオカルティズム・民俗学エッセイ・評論を一挙集成。

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【読書備忘録】久米晶文『「異端」の伝道者 酒井勝軍』(2012)

 更新をサボっている間に世間は何やら大変なことになってしまいましたが、それはそれとして今回も相変わらずオカルト関連の本を紹介する当ブログです。

 ということで今回紹介するのはこちら。

「異端」の伝道者酒井勝軍

「異端」の伝道者酒井勝軍

 

 日本人のルーツはユダヤ人である。

 よって、日本語のルーツもヘブライ語である。「君が代」もヘブライ語で解釈することができる。日本国の象徴たる天皇も、ユダヤ人を祖先としている…

 こうした「日ユ同祖論」に触れて面喰ったことのある人は、案外多いんじゃないかと思います。オカルトの一ジャンルとして根強い人気を集めているこの言説ですが、歴史を遡ってみると意外と古く、現在確認されている限りでは江戸期にまで遡れるようです(藤野七穂「日猶同祖論の誕生と系譜」ASIOS編『昭和・平成オカルト研究読本』)。

 そして近代日本の、代表的な日ユ同祖論者として知られているのが、酒井勝軍(さかい かつとき)という人物です。

 酒井は明治7年(1874)の山形県に生まれ、キリスト教徒として洗礼を受けたのちに音楽研究のためアメリカへ留学、その経験を活かして帰国後は讃美歌を中心に据えた布教活動を行っていました。

 そうした堅実な牧師として日々を送っていた酒井が、なぜ日ユ同祖論や、日本にピラミッドを見出したりするような「異端」の伝道者として変貌するに至ったか。

 本書は酒井勝軍という人物の思想と生涯を、「トンデモ」という衣を取り去って同時代的な動向から検証した評伝となります。

〈内容紹介〉Amazon商品紹介欄より引用
 太古日本には超文明があった? モーセの裏十戒石板が日本にあった? キリストは日本に渡って青森で死んだ? 日本とユダヤは同祖先? ハルマゲドンで天皇が世界を統一する?…など、今日にも伝わる奇矯なオカルト説を唱えた男・酒井勝軍の生涯と、知られざる近代異端宗教史。

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【映画備忘録】『キャッツ』(2020)

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 全米が(恐怖で)泣いた!

 と言っていいくらいに阿鼻叫喚なレビューが次々と寄せられている話題作の、映画版『キャッツ』。

 それらの意見を簡単にまとめると、「怖い」「キモい」「夢に出そう」「なんで映画化してしまったんや」といった感じでしょうか。

 しかしそこまで酷評されるのなら、逆に観てみたくなるのが人情というもの。

 と言うわけで、その真価を確かめるべく劇場まで足を運んできました。

 

〈あらすじ〉※公式サイトより引用
 扉の向こうには、なにが待っているの――?

 満月が輝く夜。

 若く臆病な白猫ヴィクトリアが迷い込んだのは、
 ロンドンの片隅のゴミ捨て場。
 そこで出会ったのは
 個性豊かな〝ジェリクルキャッツ〟たち。

 ぐうたらな猫、ワイルドな猫、
 お金持ちでグルメな猫、勇敢な兄貴肌の猫、
 不思議な力を持つ長老猫…

 様々な出会いの中でヴィクトリアも自分らしい生き方を見つけていく。

 そして今宵は新しい人生を生きることを許される、
 たった一匹の猫が選ばれる特別な夜。

 一生に一度、一夜だけの特別な舞踏会の幕が開く――。

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【読書備忘録】堀江宗正『ポップ・スピリチュアリティ』(2019)

ポップ・スピリチュアリティ: メディア化された宗教性

ポップ・スピリチュアリティ: メディア化された宗教性

 

 あけましておめでとうございます。だいぶ経ちましたが新年一発目の記事です。

 元日の朝にテレビをつけてみたところ、NHKで「京の都を守る霊山『祈り』の道」という特集をやっており、神社仏閣の中でも特に霊験あらたかとされる場所を「あらたかスポット」として紹介していました。

 言葉こそ違いますが、要するにパワースポットですね。「最近元気が出ないのでパワーをもらいにきた」と語る参拝者の姿も放送されており、何らかの「パワー」を求めて神社仏閣に訪れる人は一般的になっているようです。

 他局の番組でも同じように、神社の「ご利益」を紹介するものがちらほらと見られ、神社や寺など宗教的なものに惹かれる人々の願望を映し出しています。

 しかしパワースポット巡りをする人々の多くは、神社仏閣などの伝統宗教に対してそれほど強い信仰心を持っているわけではありません。むしろ、パワースポットと言われる場所だけに訪れて、メインの本殿に参拝せず出ていく人すら珍しくありません。特定の神仏に関係なく、霊験のありそうな場所で何らかの超越的な「パワー」に触れることが、一番の目的となっているのです。

 このように、自身が超越的存在と繋がっているという感覚や、その感覚を得ようとする実践のことを、宗教学などでは「スピリチュアリティ」と呼んでいます。伝統宗教が退潮傾向にあると言われる現在ですが、対してスピリチュアル的な言説は今でも人気です。

 このスピリチュアリティという、世間に膾炙しつつも実態の捉えにくい「宗教的なもの」に対し、専門的に論じた著作が今回紹介する『ポップ・スピリチュアリティ』です。

〈内容紹介〉Amazon商品紹介欄より引用
江原啓之ブーム」とその後。「前世療法」と現代の輪廻転生観。「パワースポット」体験。サブカルで関心が高まる「魔術」。軽視されがちなこうした現象は、実はグローバルに連動し、日本ではテレビ、小説、アニメから、ネット、SNSへと拡散と深化を続ける。現代日本の「ポップ・スピリチュアリティ」を考える本格的研究。

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【読書備忘録】『予言がはずれるとき』(1956)

  何だか詩的な題名ですが、小説ではなく社会心理学の研究書です。

 Wikipediaに「UFO宗教」という、奇妙な響きの項目があります。恐らく英語版の「UFO religion」から翻訳された記事だと思われます。

 これは文字通り、UFOに乗ってやってくる宇宙人を〝神〟のように信仰する信仰体系です。オカルト話ではしばしば、宇宙人が何故か地球人に対して親切にも世界滅亡の警告をしてくれたりしますが、こうした言説は元を辿れば「UFO宗教」へと行きつきます。

 有名な例で言えば、ジョージ・アダムスキーという人物が挙げられます。彼は現在最もポピュラーなUFOの形状としてイメージされることの多い「アダムスキー型UFO」の目撃者として有名ですが、同時に彼はしばしば宇宙人と「接触」し、地球に訪れる危機を警告された、と主張しました。彼はその経験を多くの著作で披露し、熱狂的な信奉者を生み出しました。

 このように宇宙人と積極的に接触し啓示を受け取る人を、UFO界隈では「コンタクティ」と呼んでいます。

 一見荒唐無稽な話に見えますが、50~60年代のアメリカや日本のオカルトブームにおいては決して珍しい話ではなかったようです。日本で有名な事例としては、宇宙友好協会(通称CBA)というUFO研究団体が終末予言を行ったとして世間からの困惑と嘲笑を受けた「リンゴ送れ、C事件」という出来事があったりします。

 さて今回取り上げる『予言がはずれるとき』も、こうしたUFOカルト団体による終末予言に関わる本です。

 簡単に内容を紹介すると、「終末予言がはずれたとき、それを唱えた団体はどうなるのか?」という問いを「認知的不協和理論」から明快に説明した、社会心理学の古典的な研究書です。

〈内容紹介〉Amazon商品紹介欄より引用
 予言がはずれた後、かえって布教活動が活発になり、信者も増大して大きな教団になっていく…。予言を教義の中心的要素とする宗教グループや教団の布教活動にかかわる社会心理学的・文献的および実証的研究の書。

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【読書備忘録】松尾恒一『日本の民俗宗教』(2019)

日本の民俗宗教 (ちくま新書)

日本の民俗宗教 (ちくま新書)

 

「日本人は無宗教だ」という言い方がよくなされます。

 しかし実態としては、「無宗教」の自意識を持っている人でも普通に神社やお寺に参拝するし、地域のお祭り見物にも行くし、国内に住んでいる人なら基本的にはどこかの神社の氏子という扱いになります。

 言ってしまえば日本人には、宗教とは意識せずに宗教的な実践を行っている人が多々いるわけです。そうした「意識しない当たり前の宗教」は、多くの場合「日本独自の伝統」という言説の中に取り込まれていきます。

 しかし「伝統」と聞くと遥か昔からあるように思えてしまいますが、どんな文化であっても何らかの歴史的な背景から生まれてくるものです。本書は、現在当たり前のように社会に溶け込んでいる宗教や宗教的実践=民俗宗教がどのような歴史的な展開から形成されたのか、通史的に論じたものです。

〈内容紹介〉Amazon商品紹介欄より引用
「日本独自の文化・伝統」はどのようにして生まれたのか。天皇のもと稲作中心に営まれた古代日本社会に、中国大陸から仏教が伝来して以降、さまざまな文化との交流、混淆、対立が繰り返される。大嘗祭祇園祭り、盆踊り、元寇ねぶた祭り南蛮貿易、寺請制度、かくれキリシタン。古代から現代まで、数々の外来の文化の影響を受けて変容し形成された日本の民俗宗教を、歴史上の政治状況、制度の変遷とともに多角的に読み解く。

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