河原に落ちていた日記帳

趣味や日々の暮らしについて、淡々と綴っていくだけのブログです。

【オカルト本を読む】(後編)ジョージ・アダムスキー『空飛ぶ円盤実見記』

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ジョージ・アダムスキー(『第2惑星からの地球訪問者』より)

 

kawaraniotiteitanikki.hatenablog.com

 本稿は前後編の内の後編です。まず前編からお読み下さい。

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【オカルト本を読む】(前編)ジョージ・アダムスキー『空飛ぶ円盤実見記』

 一つ、こんなお題を出されたとする。

「UFOの絵を描いてみて下さい」

 さて、どんなUFOのイラストが集まるだろうか。

 言うまでもないだろうが、UFOとは「Unidentified Flying Object」(未確認飛行物体)の略である。要するに「空を飛んでるよく分からんやつ」以上の意味はなく、特定の形を描く必要はない。

 ところが多くの人は多分、つばの広い帽子のような、または灰皿を逆さにしたような形のUFOを描くのではないだろうか。いわゆる「グレイ型」の宇宙人をついでに描く人もいるかもしれない。

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こちらはいらすとやのUFO。かわいいシンプルなUFO(宇宙船)のイラストです。

 こうした典型的なUFOの形状は、ジョージ・アダムスキー[1891-1965]という人物が初めて目撃したとされており、その名をとって「アダムスキー型」と呼称されている。このことはテレビのオカルト番組でも解説されることが多く、オカルトに特に関心はないが何となく知っているという人もいると思う。

 ただ、その「目撃者」たるジョージ・アダムスキーその人自身については、あまり触れられる機会がない。

 一言でアダムスキーを紹介すれば、「世界で初めて宇宙人と会った男」である。1952年11月20日アダムスキーはカリフォルニアの砂漠で金星人と会見し、地球外の惑星における平和で豊かな文明のことや、地球に迫りつつある危機について教授された……と、彼自身は主張している。

 彼は1953年刊行の『Flying Saucers Have Landed』という著作によって、その名を世間に知らしめた。地球外の知的生命体との会見という「体験談」は、驚きと感動、そして嘲笑をもって迎えられ、日本でも翌年に『空飛ぶ円盤実見記』(高橋豊訳、高文社)という題で翻訳され話題となった。

 こうした、地球人に対し友好的な宇宙人と出会ったと称する人々を、UFO界隈では「コンタクティ」と呼んでいる。宇宙人とコンタクトできると称する人はけっこういるが、アダムスキーはその始祖的な存在である。そして彼が宇宙人の好意で撮らせてもらった円盤の写真が、世に言う「アダムスキー型」という一つのパターンとなって広まったのである。(ついでに言うと、この円盤に乗ってやってきた宇宙人はグレイ型ではない)

 だが残念ながら、彼の体験談を裏付けるはずのその写真については、かなり早い段階から模型を使用したトリックの可能性が指摘されており、当然体験談そのものにも厳しい疑義がぶつけられた。

 現在、UFOを「宇宙人の乗り物」として研究している人であっても、アダムスキーの証言を丸ごと信じている人はほとんどいないという。そのことをもって彼の体験談を嘘やトンデモと片付けることは簡単だが、かつてその存在がUFO学界に(良くも悪くも)新風をもたらし、白眼視されつつも多くの信奉者を抱えるようにまでなったのは事実だ。

 UFOや宇宙人というもののイメージに多大な影響を与えた男の、元々の「体験」はどのようなものだったのだろう。今一度、彼の著作を紐解き、宇宙人の声に耳を傾けてみよう(1957年刊行のベストセラー双書版を底本とした)。

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【読書備忘録】C・ピーブルズ『人類はなぜUFOと遭遇するのか』(1994)

 オカルトと言えば、UFO! 

 ……というイメージも薄くなってきているらしい今日この頃ですが、それでも「宇宙人が地球に訪れている」という話は相変わらず人気のオカルトネタです。

 しかし宇宙人というのも、よく考えてみれば変な存在です。よく考えなくても変ではありますが、考えてみるともっとヘンテコリンです。

 どういった目的でか、人間を誘拐して人体実験を繰り返したり、わざわざ家畜の牛を攫って血を抜いてから雑に放置したり。そんな恐ろしく理不尽な行動をする一方で、宇宙人は親切にも地球に訪れる危機を人間に警告してくれたりします。それも何故か、政府の人間などではなく、特に権力もなさげな片田舎のおっちゃんとかに。

 こ奴らは一体何がしたいのか? そもそも彼らが乗ってくるという「UFO」(=未確認飛行物体)とは、一体何なのか?

 そんな疑問を感じた人には、是非とも一度は手に取って頂きたいのが本書『人類はなぜUFOと遭遇するのか?』です。原題に”WATCH THE SKIES! A Chronicle of the Flying Saucer Myth”(空を見よ! 空飛ぶ円盤神話年代記)とある通り、アメリカにおけるUFO言説の展開を通史的に論じたものです。

 UFOを巡る伝説の生成と展開を詳細に眺めていくことで、見えてくるのは何か。それは意外にも宇宙人の真実などではなく、UFOの陰にうごめく人間の暗い情念かもしれません。

〈内容紹介〉※裏表紙の紹介文より引用
 米国スミソニアン協会が刊行した空飛ぶ円盤神話の歴史年代記。1947年以来のあらゆるUFO事件について一次資料を徹底的に調査、検証して記述し、的確でフェアな考察を加えている。アメリカ情報局や議会の調査と比べても遜色ないもので、CIAがこれらの現象に巻き込まれていった経緯も、暴露している。

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【オカルト本を読む】『別冊実話特報』

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 今回は、ちょいと小粒な記事をば。

 個人的な話から始まって恐縮だが、筆者は今年の10月31日、京都の知恩寺で開催された「秋の古本まつり」に繰り出してきた。そこで入手した資料の一つが、1950年代に刊行されていた雑誌『別冊実話特報』の、以下の4冊である。

  • 第7集「魔境に挑む探検隊の記録」
    昭和32年7月発行
  • 第9集「謎に眠る暗黒大陸(アフリカ)」
    昭和32年10月発行
  • 第15集「秘境に埋れる黄金伝説」
    昭和33年10月発行
  • 第21集「山の魔性と砂漠の怪奇」
    昭和34年10月発行

 各号1000円で売られていたのを衝動買いした。折角なので今回は、この『別冊実話特報』を取り上げることにしたい。

『別冊実話特報』は1957年(昭和32年)から双葉社で刊行された月刊誌であり、創刊から2年で完結したが、ピーク時には毎回15万部を売り上げる人気誌だったという。

 本誌の『実話特報』は戦後のカストリ雑誌の流れを汲み、いわゆるエロ・グロ・ナンセンスに主眼を置いた構成であったが、それに対し『別冊実話特報』は世界の未開社会に残る「食人」や「首狩り」などの「野蛮」な風習や、日本人からは奇妙に見える性風俗、また人跡未踏の地に眠る財宝の風説など、〈秘境〉を主要なテーマとしていることが特徴であった。

『別冊実話特報』自体は1959年に終了したが、その後1960年代の出版界では「秘境」を書名に冠する書籍が急増し、空前の「秘境ブーム」が到来した。『別冊実話特報』は秘境ブームの基礎を築いたと言って間違いない。

 それどころか、秘境ブームは70年代に興るオカルトブームの前身となったと評価されている。つまり『別冊実話特報』はオカルトブームの下地をもなした雑誌として、無視できない位置づけを占めるのである。

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【オカルト本を読む】佐治芳彦『謎の竹内文書』

謎の竹内文書―日本は世界の支配者だった!

古史古伝」と呼ばれる文献群がある。

 一言では、「古事記日本書紀以前の書」として紹介されることが多い。実際には近世から近代にかけて書かれた偽書ばかりなのだが、「正史からは抹消された真実の歴史が記された書物」だという触れ込みで、歴史のロマンを掻き立てるアイテムの一つとして時おり言及されることがある。

 その古史古伝の中で一番有名なものが『竹内文書』だ*1。これは天津教という神道新宗教の教主だった竹内巨麿という人物が、先祖伝来の神宝として公開していた文献類の総称である。第25代天皇武烈天皇が、日本の真の歴史を伝える文書を臣下の平群真鳥武内宿禰の孫)に託し、それが竹内家に代々守り伝えられたものだという。

 内容としては、8000億年以上にまで至る長大な神々の系譜が連なり、アメノミナカヌシやアマテラスが神でなく天皇として位置づけられているほか、エホヴァや盤古など海外の神々も登場し、その上モーセやイエスブッダ老子ムハンマドなど、宗教史における大物たちが次々と来日して日本で思想を学んでいたことを示す資料などがあり、古史古伝の中でもひと際破天荒な内容で知られている。

竹内文書』のあまりに異端的な内容は政権から危険視され、昭和11年(1936)伝承者の竹内巨麿は官憲により不敬罪で捕えられてしまう。しかし天津教は軍部に熱心な支持者を得ており、神宝や文献は軍人により靖国神社遊就館へと避難させられていたのだが、それも東京大空襲の戦火により失われてしまった。それに加え、狩野亨吉による文書鑑定により徹底的に偽書として糾弾されてしまい、『竹内文書』の史料的な価値は木っ端みじんに粉砕された。

 漢字以前の文字だという「神代文字」で書かれた内容や、神武天皇以前の73代にわたる謎の「ウガヤフキアエズ王朝」の存在、また伝説の超金属「ヒヒイロカネ」や古代のUFOとも目される「天浮舟(あまのうきふね)」といったSFファンタジー的な記述など、オカルトファンにとっては胸躍る素敵なエピソードが満載である。だがその実態は、竹内巨麿自身がこつこつと創作していった結果、内容が手に負えないほど壮大に成長していったものだった。

 その詳しい内容や『竹内文書』以外の古史古伝については、原田実『偽書が描いた日本の超古代史』などを参照してほしい。*2

 

 さて、そうした古史古伝の数々を題材とした本を書き人気を集めたのが、佐治芳彦という作家である。既に故人であり、亡くなったのは2012年以降のことらしいが、正確な時期などは分からない(藤野七穂「ベストセラー『謎の竹内文書』の著者・佐治芳彦」)。

 佐治は1979年、『竹内文書』を一般向けに紹介した書籍『謎の竹内文書 日本は世界の支配者だった!』を刊行し、一躍ベストセラー作家となった。以降、佐治は『東日流外三郡誌』や『秀真伝』など〝異端の史書〟を取り上げた作品を書き続け、「古代文明評論家」なる肩書が定着することになる。現在、著書は全て出版停止で、電子書籍化もされていないようだが、古書店などでその著書を見つけ出すことはそう難しくないだろう。

 なお佐治以外にも、同様の文献をもとに独自の異端的な歴史観を披露した研究家は数多く存在するが、本稿では便宜的にそうした研究家たちを「超古代史家」と呼称することにする。

 超古代史家たちの夢想的な史観の数々が、歴史学の俎上に載ることはまずない。偽書を素材に歴史を論じたところで、その歴史は偽史にしかならないからだ。

 しかし学者から無視されようとも、構わずに彼らは歩みを進めた。むしろ学術から無視されることこそが、逆説的に彼ら超古代史家のアイデンティティになっていたと言っていい。

 そして、異端の古代史を打ち出した本は、学術的な歴史本よりよく売れた。人々は幻の超古代文明に、何を求めていたのだろうか。

*1:竹内文献』という表記が用いられることも多いが、本稿では基本的に佐治の表記に準ずる。なお、他の文献についても同様。

*2:ネット上では同氏によるこちらのサイトの「コラム」欄にて、古史古伝の数々が紹介されている。

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【読書備忘録】横山茂雄『聖別された肉体』(1990)

 第二次世界大戦中、ナチズム下のドイツでは人種主義が極端に推し進められ、多くのユダヤ人が迫害・虐殺された……という事実は、わざわざここで言うまでもなく世界史の一般常識となっています。たまに否定したげな人もいますが。

 ナチスによる負の遺産は相当なものだったため、今でもナチスまたはヒトラー関係の書籍は数多く出版されています。それだけに内容は玉石混交で、オカルト的なネタとして消費されることも多いですが(ヒトラーの予言とか)、実際にナチスとオカルティズムは決して無関係ではなかったのです。

 本書はナチズムが台頭してくる時代において、オカルト的な思想がいかに人種主義と接合され、フェルキッシュ(民族至上主義的)な思想や反ユダヤ主義が形成されていったかを丹念に追った、オカルト研究史上の名著です。1990年の原著刊行以来、長らく入手が難しくなっていましたが、今年になってめでたく再刊され、容易に手に取ることが可能になりました。

《内容紹介》※創元社公式HPより引用
ナチ・オカルト研究の名著、ついに増補再刊

 現在においても、公認文化から排斥され、深層に抑圧された無意識的な概念の表出する舞台であるオカルティズム。
 それは近代ヨーロッパにおいて社会ダーヴィニズムと接合し、とりわけナチ・ドイツにおいて、フェルキッシュな人種論として先鋭化、ついには純粋アーリア=ゲルマン人種のホムンクルスを造らんとする計画が「生命の泉」で実行に移されようとするまでに至った。
 ヨーロッパの底流に流れるそのオカルティズムの全体と本質を初めて明らかにした幻の名著がついに増補再刊。

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【オカルト本を読む】五島勉『ノストラダムスの大予言』

ノストラダムスの大予言 迫りくる1999年7の月人類滅亡の日 (ノン・ブック)

 今年7月21日、五島勉氏の訃報が報じられた。

 2020年6月16日、90歳で逝去されたという。ご冥福をお祈り申し上げます。

 

 さて五島勉氏といえば、オカルトを嗜む人間番外地の方ならわざわざ説明するまでもない有名人だろう。1973年に『ノストラダムスの大予言』という書籍を出版し、たちまちミリオンセラーを叩き出した世紀の大ベストセラー作家だ。

 著者自身想定外であったろう爆発的ヒットによりシリーズ化がなされ、初刊から98年までに計10冊の『大予言』シリーズが刊行された。シリーズ全体の売り上げは最終的に590万部を超えたという。ちなみに初巻については2014年に電子書籍化されており、現在でも読むことは容易である。

 その内容をかいつまんで言えば、「ノストラダムスというフランスの予言者が、1999年に人類が滅亡することを予言していた!」という主張を、当時の社会情勢を交えながら本一冊丸々使って説明したものである。以降のシリーズでも手を変え品を変え、「1999年滅亡説」が繰り返し主張されている。

 この「予言」が当たらなかったことは言うまでもない。今ではノストラダムスという名前すら知らない人も増えた一方、オカルトファンの間では有名なネタとして今も生き永らえている。オカルトに特に関心がない人でも、「1999年7の月、空から恐怖の大王が降ってくる……」というフレーズだけは何となく知っている人も多いだろう。

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今でもいらすとやでフリー素材化される程度には知名度がある

 しかしネタの知名度はともかくとして、五島氏の書いた『ノストラダムスの大予言』という著書自体を、出版から2つの年号を経たこの時代に読んでみた人はそんなにいないのではないだろうか。

 今となっては正直、本書を読み直す意味は特にない。滅亡説が外れたこともそうだが、本書で披露されたノストラダムスの人物像や予言詩の解釈も、大幅な誇張や(恐らく意図的な)誤り、明らかな創作部分が多く、ノストラダムスの研究書としても役に立たない。

 しかし70年代に本書が広い支持を得て、それから世紀末にかけても何らかの形で、一部の人々の世界観に影響を与え続けていたのは事実である。五島氏の「予言」が当たらなかったと言って今笑うのは簡単だが、どうしてそんな「予言」がかつて広く受け入れられ、それがどんな爪痕を残したのか、考えてみるのも無駄なことではなかろう。

(蛇足だがあらかじめ断っておくと、五島氏の訃報にかこつけてこの記事を書いた訳ではない。元々この記事を書こうと調べごとを進めていた最中に偶然訃報が重なり、結果的に訃報に合わせたような形になってしまったことを付記しておきたい)

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