河原に落ちていた日記帳

趣味や日々の暮らしについて、淡々と綴っていくだけのブログです。

【読書備忘録】1月に読んだ本まとめメモ

 あけましておめでとうございます。まだギリギリ「正月」なのでこの挨拶もセーフのはずです。

 皆さまはいかがお過ごしですか。お元気でしょうか、生き残ってますか。

 私の方はUMAに関する調べ物を進めようと思っていた矢先、オミクロン株とかいうゴミカスが流行り始めてしまったため、腰を据えた調べ物がやりづらくなり悶々としているところです。地元の図書館では30分以内での滞在を呼びかけられているのですが、はっきり言って30分で調べ物を進めるのは不可能です。

 なので調べたことの成果をブログに書くこともできずにいるのですが、折角なので自分用のメモも兼ねて、1月中に読んだ本の感想を気軽に書いてみることにします。ご紹介するのは、以下の本です。(順番は読了した順)

 

〈怪異〉とナショナリズム

◎怪異怪談研究会監修『〈怪異〉とナショナリズム』 2021年、青弓社

 過去には「怪異の時空」シリーズなどの成果を出している、怪異怪談研究会の最新刊。「ナショナリズム」と「怪異」という、一見関わりのなさそうな2つの概念を切り口にした論文集です。

 怪異・妖怪の研究というと前近代の事例研究が多くなりがちですが、本書では近代・戦後以降の文学や政治史・思想史が多く対象とされているのが特徴です。

 正直、「怪異」と特に関係なく見える論考もちらほらありますが、それはそれとして興味深いテーマが揃っているのでお勧めです。個人的な興味に合致したのは、以下の通り。

 

UFOとポストモダン (平凡社新書)

木原善彦『UFOとポストモダン』 2006年、平凡社新書

 UFOについて、宇宙人は円盤に乗って地球に来ているのか、政府はその事実を知りつつ隠蔽しているのか……という話ではなく、あくまで社会的・文化的な産物としてUFOなる存在を論じた、日本においては珍しい人文学的なUFO論書になります。略して「Uポモ」。

 さて本書、「UFO神話は時代と対応して変化していく」という視点は非常に良いと思うのですが、読んだ感想としてはさっぱり分からん!特に第4章が本当に分からん!という感じです。

 そもそもポストモダン論を私自身よく知らないので、本書に書かれていることが妥当なのかどうかも安易に言うことはできないのですが……その上であえて一つ言うとすると、UFO神話の変遷をポストモダン論に無理くり当て嵌めているように見えてしまいました。

 しかし何にせよ、研究者はこの文章を読んで理解できるんでしょうか。だとすれば、素直に凄いと思います。

 

影踏亭の怪談

◎大島清昭『影踏亭の怪談』2021年、東京創元社

 こちら、タイトルだけ見ると実話怪談か何かに見えますが、実は怪談とミステリーを掛け合わせた異色の推理小説です。

 著者の大島清昭氏は、本作を出す前は民俗学研究者として活動されていた方で、『現代幽霊論』という単著もあったりします。そして作中でその本について言及される場面もあり、自分で自分の研究を作品に利用できる“強さ”のようなものを感じました。これが自給自足か。

 近年では今村昌弘氏による一連の作品のように、ミステリーに別のジャンルを掛け合わせる搦め手の作品が増えているように思うので、これもそうした流れから出たものでしょうか。一味変わったミステリーが読みたい方、お一つこんなのもいかがですか。

(一応ネタバレ注意……冷凍メロンのトリックはさすがにかなり無理があると思う。

 

踊る猫 (光文社時代小説文庫)

◎折口真喜子『踊る猫』2012年、光文社

 俳人与謝蕪村を主人公にした、和風の連作妖異譚。小説宝石新人賞受賞作の「梅と鶯」も併録されています。

 しみじみと優しく、切ない味付けの妖怪話というのは、いつ読んでも良いものです。個人的には、山中を彷徨う主人公が不思議な村に迷いつく「月兎」が好み。

 著者は本作が初の単行本デビュー作とのことで、この後に出た作品を読むのも楽しみです。

 

booth.pm◎『ましらだま 殿』2021年、同人誌

 ちょっとおかしいくらいの妖怪好きたちが、自らの興味の赴くままに書いて作られた妖怪オンリーの同人誌。

「現代のカストリ誌」というコンセプトの通り、海外の密輸入鬼太郎や河童懲罰歌謡、ガチめのクダン論考や人の飼っている羊を皆殺しにする宇宙人まで、マニアックすぎる話題が豊富な一冊です。

 同人誌ということで売り切れてしまえば販売終了なので、気になる方はお早目の購入を。

 

完本 黒衣伝説

◎朝松健『[完本]黒衣伝説』2001年、早川書房 ※画像はKindle

 これは到底一言では要約できない、まさに「奇書」とでも言うほかない作品です。元は1988年に刊行され、2001年に大幅に増補して再刊されました。

 失踪したオカルト作家、那須蔵人の残した手記を、著者の朝松健氏が編集していくうちに、著者自身の日常が段々と怪奇に侵食されていく……といった感じの、実在する人物の名前がバンバン出てくるメタフィクションホラーとでも言いましょうか。

 那須の手記、それを編集する著者自身の体験、そして再刊によって大幅に加筆された箇所と、非常に重層的にストーリーが絡まりあう怪作で、複雑に入り組んだ時系列とペダンティックなオカルト談義が読者を現実と虚構の狭間へと誘っていきます。

 私自身は特に何ともなかったのですが、本作の感想をTwitterで呟いたところ、「読んだ後しばらく精神に不調をきたしたのであなたも気を付けてほしい」という内容のリプが来たことがあります。現代の『ドグラ・マグラ』か何か?

 

民俗学 ヴァナキュラー編: 人と出会い、問いを立てる

◎加藤幸治『民俗学 ヴァナキュラー編 人と出会い、問いを立てる』2021年、武蔵野美術大学出版局

 最近よく民俗学の概説書が刊行されていますが、民俗学と言えば一般には民間信仰や年中行事の話題が主となりがちな中、本書は生業や民具といった事例を中心に民俗学のエッセンスが解説されています。個人の感想ですが、生業に関わる話は人々の苦楽入り混じった暮らしの様相が窺えて好きなんですね。もちろんそうした消費の仕方は、学術とは程遠い営みなわけですが。

 著者は博物館学芸員としての経験が豊富な方なので、「民俗を展示する」という営みについても論じられているのが興味深く読めるところです。

 

勧請縄: 個性豊かな村境の魔よけ (近江の祭礼行事)

◎西村泰郎『勧請縄 個性豊かな村境の魔よけ』2013年、サンライズ出版

 これは読み終えたというより、最近よく参照している本なのでご紹介。

「勧請縄」という近畿地方を中心に広く見られる魔除けの習俗があるのですが、それが特に濃厚に分布する滋賀県における事例を、悉皆的に紹介している本です。

 一つひとつの事例がフルカラー写真で紹介されているのが嬉しく、その造形の面白さは眺めていて飽きません。資料としても貴重な一冊。

 本書を手に各地の勧請縄を巡るのが、最近の私のマイブームです。

 

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◎『ヒバゴン出没50周年記念誌 HIBAGON BOOK』2021年

 広島県の静かな山奥の村で、1970年から突如始まった怪物騒動。それから50年が経ち、住民たちが怯えた”怪物”は愛される”ヒバゴン”へと変遷を遂げました。このヒバゴンの歩んだ50年の歴史を振り返り、自治体で作成されたパンフレットが本書です。

 冒頭では騒動当時の新聞記事が紹介されており、得体の知れない怪物として恐れられていた様子が窺えますが、目撃からわずか2年後にはぬいぐるみが作られ、それ以降はマスコット化や映画化など、どんどん地域のキャラクターとして浸透していったことが分かります。

 購入には、西城町観光協会に購入希望メールを送ることで注文可能です(詳細)。あくまで出版社ではない組織なので、平日の昼間など担当者の目に留まりそうな時刻を狙うとスムーズかもしれません。

 

 

 遅読なものでそこまで数は読めていませんが、何だかんだで読んでますね、こうしてみると。できればこの形式の記事をこれからも続けていければと思います。できればいいな。