河原に落ちていた日記帳

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【映画備忘録】『キャッツ』(2020)

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 全米が(恐怖で)泣いた!

 と言っていいくらいに阿鼻叫喚なレビューが次々と寄せられている話題作の、映画版『キャッツ』。

 それらの意見を簡単にまとめると、「怖い」「キモい」「夢に出そう」「なんで映画化してしまったんや」といった感じでしょうか。

 しかしそこまで酷評されるのなら、逆に観てみたくなるのが人情というもの。

 と言うわけで、その真価を確かめるべく劇場まで足を運んできました。

 

〈あらすじ〉※公式サイトより引用
 扉の向こうには、なにが待っているの――?

 満月が輝く夜。

 若く臆病な白猫ヴィクトリアが迷い込んだのは、
 ロンドンの片隅のゴミ捨て場。
 そこで出会ったのは
 個性豊かな〝ジェリクルキャッツ〟たち。

 ぐうたらな猫、ワイルドな猫、
 お金持ちでグルメな猫、勇敢な兄貴肌の猫、
 不思議な力を持つ長老猫…

 様々な出会いの中でヴィクトリアも自分らしい生き方を見つけていく。

 そして今宵は新しい人生を生きることを許される、
 たった一匹の猫が選ばれる特別な夜。

 一生に一度、一夜だけの特別な舞踏会の幕が開く――。

 

 と言うわけで鑑賞した感想ですが、結論から言えば「普通におもろいやんけ!」というのが正直なところです。そういう意味では肩透かしだった。

 レビューの中には「ストーリーに中身がない」「猫の紹介をしてるだけ」というものもありましたが、そこら辺は元のミュージカルからしてそんな感じだと思うので、私はあまり気になりませんでした。もしかしたら、本当に中身のないB級映画を一時期山ほど観まくっていたので、感覚がマヒしてるのかもしれない。

 やはり目立つ声としては、ヴィジュアル面での不興でしょうか。

 確かに、一見すると不気味です。私も予告編を観た時点では、正直「これは無いわ」と思っていました。

 しかし映画が始まって何分か見続けていると、あまり違和感も覚えなくなってきます。ありていに言えば慣れます。一度慣れてしまえばこっちのもので、俳優の演技やその歌唱を普通に楽しむことができます。

 私はそんな感じでけっこう楽しみながら観ていたのですが、やはり「怖い」と言う人の気持ちも理解できます。役者さんの顔がアップになるシーンなどでは、ふと我に返る感じで「おっ怖っ」と思ってしまう瞬間もありました。

 なぜこうした違和感・恐怖感を覚えてしまうのかと考えると、やはり舞台と映画というそれぞれの媒体で、表現や演出上での違いがあるからなんでしょう。

 舞台というのは恐らく、観客が自分の想像で補う余地が映画よりも大きいのではないかと思います。そのため舞台版『キャッツ』では、観客は演者を「人間が猫を演じている」ものとして客観的に見ることが出来るのではないかと。

 しかしその衣装を最大限リスペクトし、背景も作り込んで映画化した結果、「人間が猫を演じている」と言うより「猫人間がいる」ものとして観客は感じ取ってしまったのではないでしょうか。

 私は不勉強なもので舞台版の『キャッツ』をまだ観たことがないのですが、以前に劇団四季によるミュージカル『ライオンキング』を鑑賞したことがあります。作り込まれ、視覚的にも面白いユニークな衣装が特徴的な名作ですが、この衣装をそのままに映画化したらどうなるでしょう。多分悪い冗談にしかならないと思います。

 あるいは近年「2.5次元ミュージカル」というのが人気だったりしますが、「アニメ作品の実写映画化はたいてい酷評されるが、舞台化だと割と評価される」現象も、映画と舞台の違いという点が大きいのではないかと個人的に考えたりしています。

 ともかく、ヴィジュアル面で映画版『キャッツ』が受け入れられないという人が多いのでしょうが、逆に言えば「猫人間がいる」世界観を受け入れてしまえば、もう何も怖くないということです。

 ちなみに猫人間だけでなく、ネズミ人間やゴキブリ人間も出てきます。猫人間がゴキブリ人間を食べるシーンなど、そっちの方が視覚的にキツいかもしれませんが、その状況に慣れれば慣れるほど、あなたは楽になれる。

 そう思いながら鑑賞後にこちらの「「キャッツ」がホラー映画である「8」の理由」という記事を読んでみると、「端的に言って、カルト宗教団体にしか見えない」「怖っっっっっっっっっ!」とまで言われているのがちょっと大げさすぎるように思えます。実際、レビューサイトを見るとけっこう高めの評価も多いし。

 まぁちょいと怖いのは否定しないし、ニャンコ人間たちの動きが妙にエロティックで変な性癖を開発されている気分になることもまた一面の事実ではありますが、ぶっちゃけこの奇妙な世界観に慣れてしまうことが、この映画を楽しむ一番の方法ではないかと思います。そういう意味では、我々人間の適応力が試される作品なのかもしれません。

 前評判が前評判なので、あまり気軽に人に勧めにくい映画ではありますが、作品自体の完成度は申し分ないものです。予告編で嫌悪感を持たなかった人は観て損はないと思いますし、またはケモナー上級者やシュルレアリスティックな映像美を体験したい人にもお勧めかもしれません。

 しかし鑑賞後一番に思ったのは「やっぱり舞台版を観てみたいな」ということなのですが、とにかくこの演出や表現で最後まで突き進んだスタッフや俳優の方々に、敬意を表したいです。