河原に落ちていた日記帳

趣味や日々の暮らしについて、淡々と綴っていくだけのブログです。

【映画備忘録】『貞子』観てきました。

http://piacinema2.xtwo.jp/contents/google/flyer/180019.jpg

 鈴木光司氏がホラー小説『リング』を発表したのが、1991年。

 それを原作とした同名ホラー映画(中田秀夫監督)が公開されたのが、1998年。

 それ以降、3Dになったり海外で撮られたり伽椰子と対決させられたり、紆余曲折ありながらコンスタントに新作が制作され続けているリングシリーズ。

 シリーズ最新作である今作は、映画シリーズの設定を一旦リセットし、現代を舞台に新たな呪いの物語が始まります。

 さて「貞子」こと山村貞子は、今作ではどのような活躍を見せてくれるのでしょうか。

〈あらすじ〉※公式サイトより引用

その呪いは、ある投稿動画から始まった……

 心理カウンセラーの茉優のもとに、ひとりの記憶障害の少女が入院してくる。
 やがてその少女は、1週間前に公営団地で起きた放火事件の犯人・祖父江が人知れず生み育てていた子供であることが判明。
 少女と真摯に向き合う茉優だったが、次第に彼女のまわりで奇妙な出来事が起こり始める――。
 一方、WEBマーケティング会社に勤める祐介の薦めで動画クリエイターとなった、茉優の弟・和真はアクセス数の獲得に焦るあまり、心霊動画を撮ろうとその火災跡に忍び込むが、動画をアップしたのちに消息を絶ってしまう。
 茉優は拡散された動画を探し出し、再生してみると、和真の背後に長い髪の女が立っていて……。

 

 てなわけで、日本のホラー映画界に多大なる影響を与えた「リング」シリーズの最新作である今作、ミーハーなワタクシとしては早速観に行かざるを得ませんでした。

 で、感想ですが…まぁ正直、非常に微妙だったと言いますか、消化不良感の残る作品でございました。

 怖さについてもそこまでと言うか、ぶっちゃけついでに観に行った『空母いぶき』の方がよほど心臓に悪い映画だったので、『貞子』の余韻が完全に吹っ飛んじゃいましたね…

 でもね、決して嫌いではないですよ。今の時代に合わせた恐怖描写の試みも行われていて、なんだかんだ退屈せずに最後まで観ていられました。

 

 さて貞子さんと言えば、井戸からひょっこり出てくるキュートな出で立ちが非常に有名ですね。ついでにテレビから出てくるところも。

 ただこのシーン、実は原作小説には存在しません。初代映画版『リング』でのオリジナルの描写なのですが、これが受けに受けて、現在では貞子さんを表す象徴的なシーンとなっています。

 当然この描写は今作においても踏襲されており、貞子さんと言えばやっぱこれだよねという「お約束」はしっかりと描かれています。

 しかし今作では、彼女の活躍する場が今までとは異なっています。

 貞子さんの代名詞と言えばもう一つ、観たら一週間後に死んでしまう「呪いのビデオテープ」がありますが、今作の貞子さんはビデオではなく、YouTubeで暴れ回るのです。実際は「YouTubeっぽい動画共有サイト」ですが、まぁYouTubeを意識しているのは確実でしょう。

 YouTuberっぽい動画配信者が廃墟に忍び込んで撮った動画を映すシーンは、かなりリアリティがあって、観ていてワクワクしました。今作で一番好きな場面です。

 

 ちなみにビデオテープは、今作には一切出てきません。こうした変化からも今作が、完全に現代向けに作られたリブート作品であることが分かるでしょう。

 しかしながらやっぱり、「呪いのビデオ」がなくなってしまったことには、一抹の寂しさを覚えてしまいましたね。原作や初代映画版の作られた時代では、ビデオテープは当時における現在進行形の技術であったわけですが、時が下りビデオが過去の技術となったことで、かえって「呪いのビデオ」というものに不気味なリアリティができていたような気がします。

『貞子vs伽椰子』でも兆候はありましたが、今作で完全に活躍の場をビデオからネットに移したことで、時代についていこうとする貞子さんの強かさを感じるとともに、ちょっとした切なさを感じてしまったことも確かです。

 また私の感じた不満点としては、主人公の弟(和真)の公開した動画がきっかけで、他人の動画にも「呪いの動画」が映り始めるという描写があるのですが、それを観た人が一週間後に呪い殺される…という展開にはならないことです。おい、貞子さん弱体化してないか。

 まぁそうした展開にすると、動画を観た人の大量死という、ホラーというよりSFチックなストーリーになってしまい収拾がつかなくなってしまいそうですが、やはり貞子さんならそれくらいはやってほしかったです。世界に向けた呪詛のばら撒き、非常に面白そうではありませんか。*1

 またネット関連のシーンで不満だった点を挙げれば、SNSの投稿が声付きで読み上げられる描写がいまいち理解できなかったですね。声は付けずに投稿だけを見せた方が、有象無象が勝手なことを言っている感じがしてよかったと思うのですが、読み上げのおかげで画面の向こうにいる個人が意識されてしまうことに。まぁここら辺は好みの問題かも。

 ストーリー全体についても触れてみますと、貞子さんの呪いの全体像を掴むためには彼女の過去の因縁について説明しないといけなくなるので、時間軸がどうしても複雑になるのですが、今作ではその辺りの説明を勢いで押しきっているような印象を受けてしまいました。

 要は因果関係がよく分からない部分が多く…例えば、祖父江初子さんと貞子さんとの関係って何か明確に描かれてましたっけ?

 もしかすると自分が見逃してしまっただけかもしれないのですが、それを確認するためにもう一度観ようという気にもあまりなれず。ここら辺のややこしさは何とかならなかったものか。

 という感じで、全体的に見れば割と微妙ではありましたが、先述の通り光るシーンもあり、私としては決して嫌いにはなれない作品です。

 モノは試し、新天地で活躍する貞子さんを一度観てみるのもいいのではないでしょうか。

*1:ちなみに原作小説シリーズでは、貞子による全人類置換計画という、予想もつかない壮大すぎるSF展開になっていきます。