河原に落ちていた日記帳

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【読書備忘録】『歴史を変えた偽書』(1996)

歴史を変えた偽書―大事件に影響を与えた裏文書たち

歴史を変えた偽書―大事件に影響を与えた裏文書たち

 

 1996年、オウムの一件が十分に冷めやらぬ時期に出版された、「偽書」に関する一般向けの論考集です。

 とは言え本書で取り上げられているのは『竹内文献』『東日流外三郡誌』『シオン議定書』などの「これぞ偽書」というものだけでなく、ムー大陸やUFO研究団体など、「オカルト」という言葉で幅広く纏められる対象が扱われています。

 全体的にオカルトバッシング的な色合いが強く、当時のオカルト界に対する辟易した感情がそのまま反映されているように思います。

 なお全くの余談ですが、本書の編集・刊行元であるジャパン・ミックスについて検索してみたところ、「ジャパンミックス被害者掲示」なるページがトップに出てきてドン引きしました。同社は既に倒産しているようですが、いろいろとゲスな経営をやらかしていたことが窺え微妙な気分になりました。

〈内容紹介〉Amazon商品紹介欄より引用
 歴史を動かすアブない文書の中身は。日本のUFO教団「CBA」が起こしたハルマゲドン騒ぎと『地軸が傾く』の関係。聖徳太子が書いた72巻にもなる『大成経』の謎。東北地方が中心だった。『東日流外三郡誌』のウソ。東宝の怪獣映画や梶原一騎のマンガに秘められた、オカルト的なイメージ。ほか多数収録。

 

 本書は、計13人のライターによる以下の目次に挙げる論考が収録されています。

はじめに

第一章 世界史を変えた偽書
・ロシア黒百人組と『シオン賢者の議定書』(中島渉)
ナチス・ドイツ―妄想と偽史の王国(永瀬唯
・疑惑の人ジェームズ=チャーチワードとムー大陸伝説・伝(志水一夫
偽史と野望の陥没大陸"ムー大陸"の伝播と日本的受容(藤野七穂

第二章 日本史を揺るがした偽史運動
偽書『大成経』出版の波紋―事件とその始末(小笠原春夫)
偽書『富士文献』と近代日本の高天原幻想(藤原明)
・時空を超えた神話・大本系教団の歴史像(菅田正昭
・奇書『竹内文献』弾圧と二・二六事件の秘められた交差(原田実)

第三章 近代日本を騒がす偽書たち
・六十年代のハルマゲドン騒動―UFO教団CBAの興亡新戸雅章
・みちのくを揺るがす『東日流外三郡誌』騒動(齋藤隆一)
オタク文化とコア・オカルトのミッシング・リンク宇田川岳夫
・オカルト業界の懲りない駄々っ子たち(朝松健)
・神聖なる詭弁と偽史武装カルト―何がオウムに起きたのか(久山信)

 先述した通り「偽書」という言葉では括り切れない様々なオカルト言説が取り上げられているため、『歴史を変えた偽書』という書名は適当でないようにも感じます。また一つひとつの論考も、オカルト批判系の本で繰り返されてきたことの焼き直しといった感が拭えません。

 本書末尾の新刊紹介を見ると、ジャパン・ミックスは他に『オトナの裏パソコン インターネットで金髪をゲット!』『悪用厳禁!盗聴マニュアル』といった書名を見るからにゲスな本を多々刊行していたらしく、まるで週刊誌のラインナップのよう。そうした視点で見ると、本書の目次もオカルト系雑誌の特集記事のような印象を受けてしまい、結局はその程度の出版社だったということでしょうか。

 とは言え、読み応えのある記事もあります。ムー大陸言説がどのように日本で受容されたかを述べた藤野論文、カルト化したUFO研究団体「CBA」の活動を追った新戸論文、そして往時のオカルト業界の内情を暴露した朝松・久山両論文が、個人的に面白く読めた記事でした。

 特に小説家・朝松健氏へのインタビュー記事「オカルト業界の懲りない駄々っ子たち」は、オカルト業界のカオスかつセコくてみみっちい有様が容赦なく露わにされており、2018年現在も現役で活躍されている方々への非難も遠慮なく実名でぶちまけられているため、刺激的であると同時に読んでいてハラハラします。当時のオカルトバッシングの風潮が、そのままの形でストレートに出された記事と言えるでしょう。

 しかしながら、本書をわざわざ古書店から取り寄せたり図書館の書庫から引っ張り出したりして読むほどの価値があるかと問われれば、実に微妙なところです。素直に長山靖生偽史冒険世界』、藤原明『日本の偽書』、小澤実編『近代日本の偽史言説』辺りを読んだ方が、オカルト言説について詳しい所が把握できると思います。

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