河原に落ちていた日記帳

趣味や日々の暮らしについて、淡々と綴っていくだけのブログです。

【日記】宗教民俗学会の研究報告へ。(2018/9/15)

 本日は、日本宗教民俗学会で行われた吉田唯氏の研究報告、「ホツマ文献にみる「都鳥」について―『秀真政伝紀』と大宝神社所蔵「都鳥の歌」を中心にを聴講してきました。どこの学会に所属しているという訳でもない只の一般人でありながら、快く参加させて頂けたことに感謝です。

 今回の発表は、『神代文字の思想』の著者である吉田唯氏による、ホツマ文献研究の最新成果だと言えます。

 ホツマ文献とは、『秀真政伝紀』(ホツマツタヱ)という書物を中心とする、神代文字の「ホツマ文字」が使われた文献のことです。

 『秀真政伝紀』は、古事記日本書紀以前に成立したという触れ込みの史書ではありますが、実際には江戸中期頃に創作されたものであると考えられます。詳しくは以前の記事に書いたのですが、吉田唯氏は『秀真政伝紀』をアカデミズムの立場から研究を行っている、ほぼ唯一の研究者だと言えます。

 歴史学的には完全なる「偽書」として黙殺されているため、研究と称するものはほぼ「トンデモ本」に分類されるものばかりですが、それを近世思想史的に研究されたということ自体に重要な意義があると考えています。

 今回の発表内容についてここで詳しく述べることはしませんが、『秀真政伝紀』の複雑に絡み合った意図や思想の全体像が垣間見えると同時に、その得体の知れなさも再認識しました。

 どういったグループが『秀真政伝紀』を作ったのか、そして近世の宗教界に対し何がしかの影響を与えたのか。気になることが色々浮かんできます。

 何しろ専門の研究者も今まで手を出していなかった代物なので、「まだ分からないことだらけ」とのことではありましたが、質疑応答では未だ文章にはなっていない吉田氏の構想が言葉の端々から窺えたため、今後一層の研究の深化があることを願っています。

 また、近世の宗教思想史を専門とする方がホツマ文献研究へと更に参入していけば、よりその思想性が明確になっていくのではないでしょうか。

 これまで「近世神話」の枠組みで研究されてきたのは、本居宣長平田篤胤らによる神話の注釈世界が主のようですが、『秀真政伝紀』はより「神話」として体系化された物語が紡がれています。近世における神学論とどのようにリンクし、またどういった位置付けにあるのか、といったところも気になるところです。

 「異端の史書」を読み解くことで、近世宗教の豊穣なる一面が開かれる可能性もあるのではないか。今回聴講して、妄想したことです。

 

〈関連書籍〉