河原に落ちていた日記帳

趣味や日々の暮らしについて、淡々と綴っていくだけのブログです。

【読書備忘録】1月に読んだ本ダイジェスト

 いつもは一冊の本のみを紹介する記事を書いているのですが、読んだ本をごく簡単にまとめて紹介してみるのも良いだろうと思ったので、試みに書いてみることにしました。

 本稿で紹介する本は、以下の通り。

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【読書備忘録】小野不由美『鬼談百景』(2012)

鬼談百景 (角川文庫)

鬼談百景 (角川文庫)

 

 普段は学術的なお固い本についてばかり書いているので、たまには小説作品についてでも。

 十二国記シリーズをはじめ、『屍鬼』や『黒祠の島』などホラー小説でも知られる小野不由美氏による、百物語小説です。

〈あらすじ〉※Amazonの商品紹介欄より引用
 学校に建つ男女の生徒を象った銅像。その切り落とされた指先が指し示す先は…(「未来へ」)。真夜中の旧校舎の階段は“増える”。子どもたちはそれを確かめるために集合し…(「増える階段」)。まだあどけない娘は時折食い入るように、何もない宙を見つめ、にっこり笑って「ぶらんこ」と指差す(「お気に入り」)。読むほどに恐怖がいや増す―虚実相なかばする怪談文芸の頂点を極めた傑作!初めての百物語怪談本。

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【読書備忘録】『改訂新版 新書アフリカ史』(2018)

 人は、身近にあるもの以外にはあまり興味が持てないもの。日本の歴史だって、興味が無くほとんど知らないという人はたくさんいます。私にもその気味があります。

 ましてアフリカの歴史なぞ、日本人でしっかり把握しているという人は希少でしょう。物理的にも心理的にも、日本から遠く離れすぎています。

 無論、国際問題の一つとしてアフリカの情勢に関心を払っている人は少なくありません。しかし日本でのアフリカのイメージとは、「未開」「貧困」など負の印象で語られることが多いのも確かです。

 しかしメディアで反復されるそのイメージは、アフリカの実情のある一面を取り出して強調したものに過ぎないのではないか。本書は古代から現代に至るアフリカの歴史を通して、近代以降の侵略と抵抗の歩みも含め、アフリカの意外な「豊かさ」やそこに住む人々の逞しさを描き出しています。

〈内容紹介〉講談社公式HPより引用

【アフリカ入門書の決定版が20年の月日を経て大改訂!】

 人類誕生から混沌の現代へ、壮大なスケールで描く民族と文明の興亡。新たなアフリカ像を提示し、世界史の読み直しを迫る必読の歴史書

 変化の激しいアフリカ現代史を新たに書き加え、従来の記述も新しい知見や主張に基づいて内容を大幅に見直した改訂新版。

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【読書備忘録】礫川全次『サンカと説教強盗』(1992)

サンカと説教強盗---闇と漂泊の民俗史 (河出文庫)

サンカと説教強盗---闇と漂泊の民俗史 (河出文庫)

 

 在野の立場で「歴史民俗学研究会」を立ち上げ、数々の異端的な学問の一端を紹介し続けている礫川全次氏。

 つい最近は『独学で歴史家になる方法』なる、そこら辺のビジネス書にありそうな胡散臭い題名の本を出版した礫川氏ですが、初期の氏による関心の対象の一つが「サンカ」でした。

 以前に氏の『サンカ学入門』を読んだことがあるのですが、本書は礫川氏による最初期の著作であり、同時に2000年代の「サンカ」研究ブームの奔りとなった本でもあります。

〈内容紹介〉批評社公式HPより引用
 大正末期から昭和初期にかけて「帝都」を震憾させた説教強盗。背後に見え隠れするサンカ。事件の全貌を克明に跡づけ、実像と虚像が同居し、原像までが交錯するサンカ(山窩)を三角寛のサンカ論を批判しつつ解明する。

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【読書備忘録】杉原たく哉『天狗はどこから来たか』(2007)

天狗はどこから来たか (あじあブックス)

天狗はどこから来たか (あじあブックス)

 

「妖怪」と呼称されるモノの中でも、一際知名度の高い「天狗」。

「天狗になる」などの慣用句もあり、恐らくその名前を知らないという人はいないのではないかと思うくらいには、日本で馴染み深い妖怪です。

 しかし有名な割には、その歴史には謎も多いのが天狗という妖怪の特徴でもあります。

「天狗」という語自体は『日本書紀』にも登場するくらいに由緒の古い語彙なのですが、その言葉が指し示すものは空を駆ける流星であり、現在イメージされる鼻高天狗や烏天狗とは似ても似つかないものでした。

 元々は天体現象を指す言葉だった「天狗」が、平安後期以降なぜ突然に人民を脅かす妖怪として跳梁跋扈するようになったのか。なぜ、仏教に仇なす存在として描かれるようになったのか。そもそも、「天狗」という言葉はなぜ「天の狗(いぬ)」なのか。

 長い間、謎とされてきた天狗イメージの源流を、「図像学」の立場から考察したのが本書となります。

〈内容紹介〉※大修館書店公式HPより引用

 天狗イメージの源流を探る!

 日本を代表する妖怪である天狗。
 しかし、その正体は多くの謎につつまれている。
 天狗はどのように誕生したのか?
 天狗の鼻はなぜ高いのか?
 そもそも、天狗とは何者か?
 図像学的アプローチにより、天狗誕生の謎を解く、天翔る者たちの文化史!

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【読書備忘録】原田実『オカルト「超」入門』(2012)

オカルト「超」入門 (星海社新書)

オカルト「超」入門 (星海社新書)

 

「UFO研究家」や「超常現象研究家」を名乗っている人が、普段何をして生活の糧を得ているのかが気になる今日この頃です。絶対に査読論文とか書いてないと思う。

 そんなことはともかく、今回はオカルトと称される文化の歴史を、広く浅く簡潔に纏めた本書に関する話題です。

 著者は、偽史関連の話題では必ずと言っていいほど名前が言及される原田実氏。氏は元々オカルト系の出版社に勤めていたという経歴もあり、偽史に限らずオカルト全般への造詣の深さが本書を通じて窺えます。

〈内容紹介〉Amazonの商品紹介欄より引用
 UFO、超能力、オーパーツUMA、心霊……オカルトは教養だ!
 本書は、オカルト史を形作った“オカルト重大事件”について、その成り立ちと背景を歴史研究家の視点から解説したものだ。オカルトは好き者の道楽や雑学だと思われがちだが、歴史家の視点で見ると全く違った顔を見せる。実はオカルト世界の事件や遺物・文献などは、その時代を反映したものばかりなのだ。例えば1950年代以降に発生したUFO目撃現象には、冷戦下での米国民の不安が色濃く影を落としている。そう、オカルトとは単純に「信じる・信じない」の不思議な現象ではなく、その時代の社会背景をも取り込んだ「時代の産物」なのだ。そして、オカルトの世界を覗き見ることで、この世界を「異なる視点」で読み解くことができるようになる。さあ、教養としてのオカルトの世界へ旅立とう。

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【読書備忘録】沖浦和光『幻の漂泊民・サンカ』(2001)

 

幻の漂泊民・サンカ (文春文庫)

幻の漂泊民・サンカ (文春文庫)

 

「サンカ」と呼ばれた人々の調査研究は、ほぼ在野の研究者に一任されているという現状があります。しかしその中で、近年アカデミズムの立場から発信されたほぼ唯一の「サンカ」研究書が、本書『幻の漂泊民・サンカ』です。

 本書はサンカ本としてはかなり有名であるようで、信頼できる情報を見極めるのが難しいサンカ本界隈においては、比較的堅実な研究書として定評を得ています。

 しかし本書は、私が以前に読んだ礫川全次氏の『サンカ学入門』にて、手頃なサンカ入門書として評価されつつも結構手厳しい批判が加えられていたのも事実。実際のところ本書の内容はどういったものなのか、とりあえず手に取って読んでみることにしました。

〈内容紹介〉Amazon商品紹介欄より引用
 近代文明社会に背を向け、〈管理〉〈所有〉〈定住〉とは無縁の「山の民・サンカ」はいかに発生し、日本史の地底に消えていったか。
 積年の虚構を解体し実像に迫る、白熱の民俗誌!
 一所不住、一畝不耕。山野河川で天幕暮し。竹細工や川魚漁を生業とし、'60年代に列島から姿を消した自由の民・サンカ。彼らは、原日本人の末裔なのか。中世から続く漂泊民なのか。
 従来の虚構を解体し、聖と賎、浄と穢から「日本文化」の基層を見据える沖浦民俗学の新たな成果。

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